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分からないことだらけ 「その未来はどうなの?」橋本治

その未来はどうなの? (集英社新書)


1.この本の目標

この本は様々な分からないことを考えてみるという本である。
目標は分からなかったことに対して、
何がどう分からなかったのか分かる ようになることである。

例えば<決断できない>には2通りある
①選択肢はあるが、選択ができていない
②選択肢が出せていない

分からないには決断以上にいろいろな種類があるが、
その一つに決断できない理由が①なのか②なのか
はたまたその両方なのかという分からなさがある。

こうなるともはや何がどうなっているのか分からない状態だろう。
問題は分からないことではなく、分からない仕組みが複雑なことにある。
つまり 何がどう分からないのかが分からない ことが問題なのだ。

2.この本の構造

この本は章毎にテーマがあって
それぞれのテーマについて著者の考えが綴られたエッセイである。
議論を厳密に積み上げるというよりは、自由に語るという感じ。

それぞれのテーマは順番に次の通り。
テレビ ドラマ 出版 シャッター街 男と女 歴史 TPP 経済 民主主義
文系っぽいとは言えるが、幅広いジャンルに手を出している。

注意として、ある話題のシステムと同じシステムの別の事例が突然出てきたり
エッセイなのでまとまりが見えにくかったりという部分も少しある。

3.この本の特徴

この本の特徴は3つある。
一つ目はしゃべり言葉で書いてあることだ。
難しいとまでは言わなくてもインテリっぽい内容でも
優しい言葉使いなので、読むのが楽しかった。

二つ目は著者がだいぶ歳上だということだ。
例えばテレビの章では「テレビは映画に取って代わる映像メディアだった」
という事実に著者自身の実感があって、その上に著者の考えが構築されている。
ジェネレーションギャップから新鮮さを感じることができた。

三つ目は自分と結びつくようなドキッとする言葉がかなり含まれていることだ。
「なるほど~橋本さんって賢いんだなぁ」と感心するだけではなく
話し言葉の中にいきなりギュッと抽象化された言葉が出てきて
こちらの緊張感が高まるのが良いアクセントになっている。

4.面白いなと思ったこと

まずまえがきが面白い。
分からない原因を分かりたいという問題点の見つけ方がいい。

私は本を選ぶときはタイトル・まえがき・あとがきで決めることが多い。
そういう意味で面白いまえがきがあると決断に困らなくて助かる。

次に何がどう分からなかったのか分かるようになったのかよく分からないのも面白い。
(別に上の文は分からないをたくさん書きたくて書いたわけではない)

確かに文章を読んで、そのテーマに対する理解は深まる。
知らなかったことも知ることができる。
そういう角度から切り取れるのかと視点の置き方も勉強になる。

しかし、本当に自分は何がどう分からないか分かるようになったのか?
と自分に問いかけると、そうでないテーマがいくつもあった。

いいことが書いてあると読んだだけで満足しがちだが、
自分の場合まえがきの目標に大いに感心して読み始めたこともあって
読んだ後にもう一度考えてみることができるという効果があった。

そして一番面白かったのは、美人は女性の権利だという洞察である。
「私が美人であっちゃいけないの?」というマジックフレーズにより
世の女性は誰でも美人である権利を獲得する。

ただしこれは男性優位な世の中だから成り立つのだ。
つまり、多少同性から評判が悪くても、
男性から人気な方がよいという考え方が成立する。

逆に男女平等を通り越して、女性が太陽になると
多少同姓からの評判が悪くても、女性からの支持を得たいという
「イケメン権利主義」が環境に適合するらしい。

個人的には世の女性の方々の多くが
メイクやエステなど美しくなることに非常に熱心であることを
ゲーム理論及びミーム的な考えを根底において説明しているのがポイント高い。


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