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暇はあるけど退屈してない人生!? 「暇と退屈の倫理学」國分功一郎著

暇かどうかは客観的に判定可能な属性である。
しかし退屈であるかどうかは主観的な状態である。
そうであるならば、暇になるということは独力では難しくても、退屈でなくなるということは自分自身の努力により掴み取れるものなのではないだろうか?

暇と退屈の倫理学


この本の一番のセールスポイントは、退屈とは何かについてパスカルやラッセルからハイデッガーまで退屈学の系譜を一望できるようにまとめたところにあると思う。
この本の最終目標は退屈への処方箋を提示することである。
そのために退屈という病気が何であるかを外堀から埋めていくように一歩一歩理解を深めていくことができる親切な設計になっている。

印象に残ったのは退屈の必然性を遊動民だった人間が定住するようになった結果、探索能力などを持て余すことになって脳に程よい負荷がかからないからと説明した箇所だった。
それは定住と退屈という組み合わせの妙という側面もあるだろうが、むしろ退屈である自分への惨めさを払拭してくれるような救いを感じたからなのかもしれない。
一方で、そのことは積極的に退屈から逃れようとしなければ、必ず退屈に捕まってしまうということも示唆している。

本書は最終的に結論を示してくれてはいる。
しかし自分にとっては(理解力不足もあって)新たな謎を発見するにとどまった。
そんな状態だからその結論を実践するところまで到達することは厳しいと思う。
むしろ退屈とは何かをあらゆる角度から明らかにしてくれたのだから、これまでの議論を材料にして自分なりの対処法を考えるという読み方をしても十分許されるだろう。

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