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通読するべき良書を紹介します
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今回紹介するのは中公新書『植物はすごい』です。
副題が「生き残りをかけたしくみと工夫」で、内容はこの副題に沿っています。
植物といえば、生物のうち動物でないものです。
つまり、動ける外敵を動かずに撃退しなければならないのです。
トゲ、味、香り、毒、色、かさぶた、、、
などなどありとあらゆる手段で自分を守る様子や
世代交代のため、あるいは冬を越えて次の年にまた復活するためのしくみが紹介されています。
へ~と思う例ばかりなのですが、とくに面白いなと思ったのは
「(埋まっている状態で)大根は上が甘く、ゴボウは下が柔らかくておいしい」という話でした。
大根もゴボウも下に伸びていくので、下の先端を虫にかじられたりすると成長できなくなってしまうので、下の先端は守る仕組みが必要になるわけです。
そこで、大根は新しい方へどんどん辛味成分を送ることで味で防御します。
そのため大根は上の方が甘くて美味しくなるのです。
一方で、ゴボウが下のほうが柔らかいのはできたての若い組織だからです。
美味しいと虫に食べられないのかと不安になりますが、そこは大丈夫。
ゴボウは灰汁抜きしないと食べられないので、灰汁で身を守っているのです。
このように、事例だけでも面白いなと思うのですが、その意味を教えてもらえるので
「へ~」よりも一段深い「なるほど~」という感慨を得ることができました。
それから極端、特殊な例をたくさん見ることで、帰納的に命題の正しさが実感できました。
例えば、「植物は自分は動けないが、種を遠くに運ぼうとする」という命題があります。
これは同じ土地で同じ植物を続けて栽培すると、特定の養分ばかりが吸い上げられて、その土地の養分のバランスが崩れて痩せてしまうということが起きかねないことから正しさが理論的に証明されています。
実際にそうなっているでしょうか?
鳥などに食べてもらって運んでもらう果物などはそうなっています。
自分がこの命題が絶対に正しいと思ったのはピーナッツの例を読んだ時でした。
ピーナッツは漢字で書くと落花生になります。
それは花を地面に落としたところに実が生(な)るからです。
しかし、これでは種が遠くに運ばれませんよね。
実は、ピーナッツの原産地はブラジルの辺りで(たぶんアマゾン)川が氾濫しやすい環境なのです。
そして川が氾濫する時に、カサカサした殻の材質によりプカプカ流されて新しい土地に運ばれるのです。
そこまでして移動したいんだなぁと心から理解できました。
この一冊はダイジェスト版テーマ別植物図鑑とでも言うべき本です。
植物の面白いところだけ取ってきて、丁寧に説明してくれています。
中公新書は無駄に堅苦しい時もありますが、「物語◯◯の歴史」シリーズや
本書を含む「◯◯はすごい」シリーズなどシリーズ物は敷居が低いかもしれません。
ちなみに『植物はすごい』の続編もでています。